医師・看護師の残業代未払いが発生しやすい理由~残業代が出にくい理由と残業代請求の手順~

2021年02月05日

医師や看護師、技師など病院に勤務する医療職は非常に忙しいにもかかわらず残業代を受け取っていないケースが多数あります。

今回は医師や看護師が何故残業代が未払いになりやすいか?理由と請求方法について解説致します。


病院の残業時間・残業代事情~看護師や医師の残業代が未払いになりやすい理由~

医師や看護師などの病院で働く方でも、原則的に法定労働時間を超えて働いた残業時間の残業代はしっかりと支払われるべきです。しかし、実際には医療の現場では「長時間労働をしても残業代まで貰えない」という風潮が多いように思われます。

なぜ、病院勤務は残業代が未払いになることが多いのでしょうか?

初めに、病院で働く方が残業代未払いになりやすい理由から挙げて参ります。


少し特殊な現場だから残業代は出ないという誤解

大病院になると、24時間患者さんに対応するために夜勤や当直などの働き方も必然的に出てきて、結果的に労働時間も長くなります。

しかし、これが、「病院勤務なんだから当たり前」「残業代は給与や手当てに含まれている」などの業界慣習を理由に残業代が未払いになっているケースも多いです。

労働基準法には「医者だから」「病院勤務だから」残業代を払わなくてよいなどの法律はありません。業界慣習というものも法律上のルールを免れる理由にはなりません。


変形労働時間制で残業代が正しく計算されていないから

夜勤や土日出勤などのいわゆるシフト勤務が多い病院では、世間一般の『1日8時間、週40時間以内』の所定労働時間とはかけ離れたような労働時間になってしまいがちです。

その結果、上のように「病院勤務は長く働くことが当たり前」というような風潮にもなってしまいます。

シフト勤務の場合、変形時間労働制を取られていることが多いのですが、たとえ変形時間労働制で1日8時間以上働いたり、週5日位以上働くシフトになっていても、何時間でも働かせていいという理由にはなりません。

変形労働時間制の下でも、残業をしたのであればきちんと残業代を支払わなくてはならないのです!


年俸制だから


特に医師の方であれば、給与が年俸で決められているという場合も少なくありません。が、年俸制であることが直ちに残業代を支払わない理由にはなりません。

年俸制の医師の方となれば給与も高水準の場合が多いので、「残業込みの年俸」という説明がされる場合もありますが、このような固定残業代制度を実施するには適正な制度の導入・運用がされている必要があります。

そのため、実際はかなり高額な未払い残業代が隠れているケースも多いのです。


裁量労働制の誤解があるから

医療という専門性が高い職業であることを理由に裁量労働制であると説明されている場合もあります。

確かに、労働基準法の裁量労働制が適正に導入、運用されていれば残業代を払う必要はありません。裁量労働制とは簡単に言うと、賃金を労働時間ではなく成果によって評価して決める制度のことで、労働者は労働時間の制限を受けなくなるためです。

しかし、裁量労働制の適用可能な業種は厳格に決められており、医者や看護師には裁量労働制の適用可能な職種ではありません 。

よって、裁量労働制だから残業代が出ないという説明は誤りである可能性が高いです。


名ばかり管理職になっているから

病院スタッフの管理業務を任せられたり、役職を与えられることによって管理職として残業代が支払われていないケースもあります。確かに法律では、「管理監督者には割増賃金の支払いは適用外」とあります。

ただ、実際には、労働基準法での『管理監督者』の条件と、病院が言う『管理職』に違いがあることが多いです。たとえ管理職扱いであっても、客観的に労働基準法が言う『管理監督者』に該当しないということであれば、正しく残業代が払われていないことになります。

 

まとめ

 

しかし、病院でも残業代は支給されます。残業代はあなたが「働いた対価」であり、あなたの「権利」です。きちんと請求して受け取りましょう。