2021年02月01日
病院でも管理職になれば残業代が出ないというような運用になっているところが多いと思います。
しかし法的にはあやしい状態です。このページを見終わるころには自分の病院が違法状態であることに気がつくかもしれません。
特に現在、看護師長や看護部長として勤務していて給与が不当というような場合には深刻な問題となることもあるでしょう。
残業代を支払う必要のない者とは?
これについては労働基準法第41条の管理監督者に該当するので
- ・残業代の支払い
- ・休憩時間の付与
- ・休日労働についての手当
が必要とされないということです。
これを見ればわかりますが、深夜労働についての割増賃金の支給は仮に管理監督者に該当したとしても必要ということです。
しかし問題はこの41条の管理監督者に該当するケースがほとんどないということです。
41条の管理監督者に該当する条件
ここからは裁判判例や行政通達を中心に紹介していきます。
これによれば管理監督者とは
- ○病院の経営方針、人事労務方針の決定、労働条件の設定に参画する権限のあること(ただし決定権までは付与されなくても良い)
- ○出勤や退勤について管理を受けず、またたとえば早退などでも人事評価を下げられたり給与の引き下げもないこと
- ○残業代などの割増賃金を受ける者よりも月例給与と賞与に相当程度の格差があること
の、3つすべての要件を満たさないといけないということです。
つまり看護師長や看護部長といった名称や病院の方針にかかわらず、上記の条件を満たさないと残業代の支払いを必要としない管理監督者にはならないということです。
看護師長にタイムカードを使わせてはいけない?
一般的な労務管理の方法といえば
- ・手書きやエクセルベースでの勤怠記録
- ・タイムカードの記録
- ・カード形式による勤怠管理
といったことで勤怠時刻の管理をしていると思います。
通常の場合には残業代の計算などの根拠となるものですが、これは原則として看護師長以上では行ってはいけません。
というのも上記の2つめの条件に該当して管理監督者ではなくなってしまうからです。
ただし働かせすぎという場合にその健康管理も病院の責任となります。
この観点からこのような勤怠管理は管理職に行うものの、給与には一切反映させないという運用が最低限必要ということになります。
つまり不就労部分の給与の控除や、賞与の判断の根拠などとしてはいけないということです。
看護師長になってかえって給与が下がったは違法
上記の3つめの条件にこれは抵触してしまうことになります。
なぜなら看護師長となって残業代が出なくなったことでそれよりも下位の看護師よりも給与が下がっているということになるからです。
残業代が出ないのだから仕方がないというような論調も多いのですが、実はこの時点で管理監督者ではないということになります。
実際に病院において管理監督者に該当する人はほとんどいない
今まで見てきて自分の病院は違法かもしれないと思った人は多いかもしれません。
私もいくつか病院の労務管理を見てきましたが、大半の病院に違法な管理監督者として残業代を支給していないということがありました。
看護部長はかろうじで41条の管理監督者に該当するというところもありましたが、それ以外ではほぼ該当しないということが多かったように思います。
これらは退職後に残業代請求として顕在化してくることもありますが、請求額も大きくなることが非常に多いです。