看護師が平均残業時間を知り、納得できる残業代を手にする方法

2020年12月25日

看護師として勤務している場合、給与明細に記載された残業時間とは別に、研修会や委員会への参加、看護研究などで莫大な時間をサービス残業に費やしている可能性が高いです。その結果、働き方に満足できていない人が多いのが現状です。

なたについても、いまの職場で残業代が出ない状況になっていないでしょうか

仕事に関する業務での残業だと、残業代は支給されるのが当然です。仕事として働いているにも関わらず、残業代が未払いとなっていて給料に反映されていないケースは多いのです。看護師の残業代の問題について、平均残業時間を踏まえながら解説していきたいと思います。


病院・施設の深刻な残業時間の実態


大手企業に勤める新入社員の相次ぐ過労自殺などが社会問題となり、国は残業時間についての見直しを行うようになってきました。このとき、一般的には月60時間の残業時間が過労死ラインとみなされるようになりました。

もちろん、一般企業の労働者と看護師の働き方には大きな違いがあります。

それは「病棟勤務などの場合であれば、看護師は夜勤など24時間体制で働く必要がある」ということです。一般企業に勤める場合は基本的に日勤ですが、病棟看護師は日勤に加えて夜勤という変則的な働き方があります。
特に夜勤は看護スタッフの人数が少なく、患者40人に対し、僅かな人数の看護師で対応することが多いため、日中よりも責任が重くなり、さらに緊張感をもって仕事に臨まなければいけません。

そのため看護師の夜勤は心身ともに大変な負担がかかり、睡眠障害や循環器疾患などの原因のひとつとされています。中には「長期的にみると、夜勤はがんを引き起こす可能性が高くなる」と指摘する医師もいるくらいです。

このようなことから看護師の場合、夜勤などの交代制勤務の精神的・肉体的負担などが考慮され、一般の労働者と比較して少なめの残業時間となる月50~60時間の時間外労働で過労死認定を受けています(大阪高裁平成20年・公務災害)。


看護師の平均残業時間は非常に多い

このような高裁での判決の判決を受けて、日本看護協会が看護師の時間外労働の実態を調査したところ、交代制勤務で働いている看護師の場合、月に10時間以上残業をしている看護師は6割以上存在することになるという結果が出ました。

さらに月の残業が50時間を超える割合が7.7%と、実に13人に1人の看護師が過労死認定ラインを超えた残業をしています

しかも、これはサービス残業や就業時間外の研修会参加、看護研究に費やす時間などの残業は含まれていない残業時間をカウントした場合の調査結果です。これらを含めると、もっと多くの看護師が時間外勤務を強いられているといえます。


時間外労働の上限は月45時間

時間外労働の上限は月に何時間と定められているか確認しておきます。

労働基準法においては、時間外労働(残業)の上限は過労死ラインを下回る、月45時間(年間だと360時間)と定められています。

月に20日間勤務する場合、一日あたり2.25時間の残業時間が上限になります。もし月45時間の残業時間を超えた場合、違法となる可能性があります。ただし、一時的に忙しい時期がある場合だと、45時間の残業時間を超えて労働したとしても法律上認められます。

 

看護師の残業代は平均すると月2万5,342円

では、看護師の平均残業代はどうなっているのでしょうか。日本看護協会の「看護師の賃金水準データ」によると、看護師の一ケ月の平均残業代は2万5,342円です。こちらは、残業時間をカウントした場合の結果です。

労働基準法では残業について割増賃金率が適用され、通常賃金の25%以上にしなければいけない規定があります。ちなみに夜勤明けからの残業の場合であれば、通常賃金の50%以上など様々な設定がされています。


サービス残業となる仕事内容の内訳

参考までに、サービス残業の主な業務内容としては、次の通りです。

  • 看護記録:60.9%
  • 患者さんの情報収集:47.7%
  • 患者さんへの対応:43.9%
  • 研修:15.2%
  • 各種委員会:13.9%

どれも自主的にしている仕事ではなく、すべて看護業務に関わる仕事であるのにサービス残業としてみなされていることが多いです。

看護師の不払い賃金の総額は、年間3億円以上になるといわれています。さらにサービス残業は改善されるどころか、年を追うごとに悪化傾向にあるとされています。


未払いの時間外労働は残業代を請求できるのか

ところで時間外労働を行った場合、給与請求はできるのでしょうか。
結論からいえば、時間外研修や勉強会、掃除などが強制参加であるのなら、その時間の給与を請求できます

強制参加とは、「上司や職場の命令に従わなければならない仕事か」「勉強会や研修などに参加しなかったため、懲戒処分や不当な罰則が科せられたか」が判断基準です。

反対にいえば、「この研修に参加してみたらいいよ」と誘われる程度の研修であれば、労働時間に当たりません。もし参加しなくて「仕事の意欲が劣る」と陰で言われたとしても、「不当な罰則を受けた」とまではいえないのです。

例えば、看護記録が終業時刻までに終わらず、時間外に仕上げなければならない場合であると、上司や職場の命令に従わなければならない仕事になります。そのため記録関係については、労働時間に該当する可能性が高いです。

他にも、始業時間前に行う掃除も「早めに来て掃除をしなさい」と明示されているのであれば、労働時間に該当するでしょう。

反対に情報収集などであれば、時間が足りないと考えて自らが早めに出勤して行うのであれば、たとえ仕事に必要だとしても自主的にしている行動とみなされるので労働時間には当てはまりません。

また勤務時間外に行われる看護研究の話し合いなども、上司から「絶対に参加しなさい」といわれたのでなければ、強制参加とはいえません。

そうなると残業代は発生しませんので、注意が必要です。つまり、残業となるかどうかは職場の雰囲気も要素として大きくなります。

まとめ

今回は看護師が平均残業時間を知り、納得できる残業代を手にする方法について少し詳しく解説しました。個人で対応しようとしても、組織全体の常識となっていたり、顧問弁護士などに介入されたりすることによって、交渉が難しいケースが多くあります。
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